100歳以上は国内7万人…長寿を決めるのは遺伝子

2019-09-04

リングドクター・富家孝の「死を想え」

毎年、敬老の日を前にして、厚生労働省から100歳以上の高齢者についての発表があります。国が表彰制度を始めた1963年はたった153人でしたが、今や約7万人。平成時代に急増してきました。

自立した100歳超は2割ほど
100歳以上の人を、「センテナリアン」(百寿者)と呼びます。約9割が女性です。長寿は誰もが願うことだと思いますが、「不老長寿」という言葉があるように、長寿だけではいけません。不老の夢は古代から語られ続けてきました。現実には、認知症がなく自立している百寿者は2割ほどです。元気に年齢を重ねるにはどうすればいいのか、健康寿命を延ばすための研究は盛んに行われています。

中でも先端医学がやっていることには驚かされます。最近の研究者たちは、長寿の原因を突き止めようと、細胞や遺伝子のレベルまで徹底して分析・研究を進めています。その結果、サーチュイン遺伝子などの「長寿遺伝子」がいくつも発見されました。こうなると、老化は自然現象ではなくなります。長寿遺伝子次第で、老化を防げる可能性が出てきたからです。となると、老化は病気と同じことになります。いまや、「老化を病気のカテゴリーに入れよ」とする意見まで出ています。

例外はいるが、寿命は115歳が限度
しかし、いくら解明が進んでも、これまで、不老を手に入れた人間は一人もいません。どんなに長生きしても、人は、最終的に老いて死んでいきます。

これまでの人類の最長寿者(ギネス認定)は、ジャンヌ・カルマンさんというフランス人女性(1875~1997)で、122歳まで生きました。

英科学誌「ネイチャー」は、2016年10月、米アルベルト・アインシュタイン医学校の3人の研究者による「人間の寿命の限界を示す科学的根拠(Evidence for a limit to human lifespan)」という論文を掲載し、議論を呼びました。それによると、人の寿命には限界があり、稀(まれ)な例外を除けば、どんなに延びても115歳が限度だとしています。


健康長寿には生活習慣などが大切
人は何歳まで生きることができるか、というのは興味深いテーマですが、多くの人の望みは、生きている間は元気で暮らしたいといったところでしょう。

長寿には遺伝的な要因も関係しているとは言え、デンマークの双子調査の結果からは寿命にかかわる遺伝の関与は20~30%と報告されていて、生活習慣などの重要性が指摘されてきました。そうした観点からもセンテナリアンについての研究は、世界中で行われています。

とくに、生活習慣の面からは次のような共通点があることがわかっています。「幸福感が高く自分の人生を肯定的にとらえている」「毎日必ず体を動かしている」「健康には注意を怠らない」「きちんと食事をとる」「友人、親戚、家族との絆が強い」などです。

日本は世界的にもセンテナリアンが多い国ですが、「和食」が一つの原因とされています。「魚をよく食べる」「豆腐、納豆、味噌(みそ)などの大豆製品の摂取が多い」などが挙げられています。


地域のあり方も重要
私は、食習慣だけではなく、地域社会のあり方も重要ではないかと思っています。地域の人々の結びつきが強いと、年をとっても、人々が支えあって元気に暮らせるのです。認知症の発症にも地域間の格差があり、その理由として人とのかかわる機会などが指摘されています。

再び遺伝子の話になりますが、「TIAL」(Total Immediate Ancestral Longevity)」という指数があるそうです。遺伝的に見た長寿の指標として提案されたものです。これは、両親(父母)と4人の祖父母の(合計6人の)寿命を合計した数値で、人類最長寿者のカルマンさんは477歳(平均79.5歳)で、家系的に長寿だったそうです。

センテネリアン研究では、100歳を超えるような長寿には、遺伝のかかわりが強いと言われています。そうだとしても子供は親を選べませんから、元気に年を重ねるために私たちにできるのは、暮らしを見直すことです。

by 富家 孝(ふけ・たかし)